2011年5月14日土曜日

エニシダ


[2011/05/01  千葉県印西市内野]
小さな児童公園の片隅で黄色い花を咲かせた木
[2011/05/01  千葉県印西市内野]
あえて形容すれば「ぺろりと出した黄色い舌」かなあ


【分類 / 学名】

科: マメ科 Fabaceae
属: エニシダ属 Cytisus
種: エニシダ Cytisus scoparius
英名: Common Broom / Scotch Broom
仏名: Genêt à balais
原産地: ヨーロッパ中西部


【観察】

自宅近くの小さな児童公園の一角に変わった形の黄色い樹花が咲いているのに気づきました。花の形のあまりのユニークさに、どう表現して良いのやら言葉につまってしまいます。敢えて言えば、「ぺろりと出した黄色い舌」、「干しイカ」のような印象を受けます。葉はクロバーのように三出複葉。これだけ派手な花を今まで意識しなかったのが不思議なくらいです。

(*追記) ついに、この花にピッタリの形容を思いつきました。「股旅者」ってどうでしょうか?自分的にはもうこれ以上の表現はないと思えるのですが。



[2011/05/14  千葉県印西市内野]
【話題】

<魔女の箒(ほうき)の原料>
空想の産物である魔女の箒というよりも、普通の箒の材料だったのでしょうね。そのような由来で、エニシダ属の木の英語俗名は Broom で、まさにホウキです。フランス語の俗名にもホウキを意味する balai が使われています。

<和名エニシダの由来>
ヒトツバエニシダ属 (Genista) の英語読みジェニスタがなまってエニシダになったという説があるそうです。別名のエニスダはもっとジェニスタに近い音ですね。

<日本伝来はオランダから中国経由で?>
多くのサイトに「エニシダは江戸時代にオランダから中国経由で日本に伝来した」と書かれているのですが、その根拠になる情報や資料を明示している記述はほぼ皆無です。どなたか権威的な雰囲気を持つ方が、何かを記述をすると、それが次々とコピーされて、自己増殖していく現象があるのではないかと思えます。「どのサイトを見ても、そのように書いているのだから、自分もそう書いて問題ないだろう」という心理が働いて、根拠を確認しないまま、同じような記述がインターネット世界のいたるところに顔を出す現象ではないかと思います。

中国経由で入ってきたのなら、エニシダと呼ばれずに、むしろ、金雀枝を音読したり訓読した名前になったのではないでしょうか?しかし、逆に考えれば、直接オランダから入ってきたのなら金雀枝という漢字をあてることはなかったかもしれません。いや、教養のある日本人がこのあて字を考え出した可能性もあります。

それとも、中国で栽培が確立していたエニシダをオランダ人が長崎まで運んで、オランダ訛りの名前で日本人に紹介したのでしょうか?もしそうだとしたら、日本人はエニシダが中国経由であるということをどのようにして知ったのでしょうか?このように、よりどころとなる資料がないと、考えや想像は堂々巡りを繰り返すしかありません。

<エニシダ属の学名の由来>
属名 Cytisus は、古いギリシャ語のクローヴァーを意味する kytisso に由来するそうです。この由来の説明を読むと、なるほど、エニシダはクローヴァーと同じ三枚の葉が一か所から出る三出複葉。納得がいきます。

<エニシダの薬効>
薬学の世界では、茎や葉を日干しにしたものを「エニシダ枝」と呼び、硫酸スパルテインという薬の製薬原料として使われているそうです。心臓疾患やむくみの治療薬となり、また、子宮収縮薬、頻脈、不整脈治療薬として使われるそうです。花のついた茎葉は、利尿、瀉下、止血、不整脈、心悸亢進、強心薬としても使われるとのことです。有毒要素も含むので素人療法は厳禁です。

<種が15メートルも飛ぶ?>
エニシダの種は成熟すると殻が激しく爆発して遠くへ飛ぶことが知られているそうで、Wikipediaによると「時には15mほど飛んでいくこともある」そうです。

にほんブログ村 花ブログ 季節の花へ
にほんブログ村


【フランス語の勉強】

フランス語版のWikipediaに以下の表現がありました。
"La fabrication de balais (d'ou il tire son nom) a été importante dans tout l'ouest de la France. Il était également utilisé en remplacement du chaume dans certaines montagnes, pour couvrir les toits. On peut encore trouver quelques maisons de ce type en haute Ardèche et en Lozère."

訳:箒の製造はかつてフランスの西部全域で重要なものでした(名前はそのことに由来しています)。エニシダは一部の山岳地方で屋根を葺くために、藁(chaume)の代わりに使われました。今でも、アルデシュ県の高地やロゼール県でこの種の家屋を何軒か見ることができます。

0 件のコメント:

コメントを投稿