2011年5月20日金曜日

フタリシズカ

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
日陰の場所にひっそりと咲いていました

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
花穂がどう見ても一本しかないみたいです


【分類 / 学名】

科: センリョウ科 Chloranthaceae
属: チャラン属 Chloranthus
種: フタリシズカ Chloranthus serratus
英名: なし (Serrate Leaf Chloranthus )
仏名: なし


【日本語表記】

二人静(ふたりしずか)


【観察】

ネット上のサイト情報では「花穂は通常2本だが、2~5本とまちまち」と書かれているものが多いようです。でも、この写真のものは一本のみでした。改めて検索してみると、「花穂が一本のみのものもある」と書かれた説明をいくつか見つけることが出来て安心しました。一人ぼっちのフタリシズカでちょっと寂しいですが、これが初めて認識したフタリシズカとなりました。


【話題】

<静御前の影>
愛する義経の逃避行に同行することもかなわず、捕捉され鎌倉に召しだされ、義経の兄頼朝の前で屈辱の舞を舞わされ、出産した義経の子は即座に殺され、その後の足取りは記録にも残らず、各地に静御前伝説として残るのみ。そのような静御前の生涯と重ねあわされたこの花は、日陰にひっそりと咲き、何も語りません。

<この二人は誰と誰?>
能の「二人静」では、吉野勝手明神の正月の神事で菜摘みに行って静御前の霊に遭遇した菜摘み女と静御前の霊ということになります。静御前伝説では、静御前とその子供ということになりそうです。静御前の生涯を考えると、静御前の母親「磯野禅尼」と静御前でしょうか。それとも、あの世で再会した義経と静御前でしょうか。

<欧米ではマイナーな植物>
この花の名前が「フタリシズカ」でなかったなら、この植物は日本人の植物愛好家にすらマイナーな存在だったかもしれません。マイナーである一つの証拠としては、チャラン属が何種あるかすらはっきりしていないみたいです。あるサイトでは、「世界に4種で、うち3種が日本で見られる」とあり、また他のサイトでは18種とするものもありました。おおむね、アジアの温帯から熱帯にかけて分布するとの説明です。欧米に存在しない地味な「チャラン属」ですので、一般欧米人の興味をひかず、結果、一般名称が生まれるはずもありません。欧米人に説明する機会が来るとは思えませんが、万一そのようなことになったら、静御前の伝説を詳細に語って、学名または日本語でそのまま記憶してもらおうと思います。


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ヤマボウシ

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
木に白い花

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
花は上を向いています

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
花と葉のアップ撮影

【分類 / 学名】

科: ミズキ科 Cornaceae
属: ミズキ属 Cornus

亜属: ヤマボウシ亜属 Benthamidia 

種: Benthamidia japonica (syn. Cornus kousa)
英名: Japanese Flowering Dogwood / Kousa dogwood
仏名: Cornouiller du Japon 原産地: 日本


【日本語表記】

山法師 / 山帽子

どちらの表記もこの樹花の雰囲気をとらえているように思えます。花の中心にある花穂が坊主頭で、花弁は白装束、それで山法師。花が上を向いて、花穂が帽子の頭頂のポッチに見えるので花全体が帽子のようなので山帽子。「帽子」という言葉は「烏帽子」に見られるように古くからある言葉ですね。法師も帽子も古くから日本にあったもので、優劣をつけがたいのですが、どちらが最初に使われたのか知りたいものです。


【観察】

兄弟分のハナミズキの花が終わって、しばらくたってから、このヤマボウシが花をつけます。どちらの花も上を向き、四枚の大きな花弁をもち、花穂がまるっぽいので、確かに同じ属の花だと納得します。葉については、形がトサミズキやマンサクの葉に似ているなというのが第一印象です。


【話題】

<さようなら Cornus Kousa の想い出>
箱根地方ではヤマボウシを「くさ」と呼んだのでそれがKousa として学名に取り込まれたそうです。なるほど、箱根の温泉郷はすでに幕末から横浜に滞在していた欧米人に人気のあるリゾートだったのですから、十分にあり得ることだと思います。
個人的には、Cornus Kousa は苦労して記憶した貴重な二つ目の植物の学名でした。最初のはスギのCryptomeria Japonica です。あるとき、通訳ガイド数名で東御苑の下見をしていたときに、知ったかぶりをして、「ヤマボウシの学名はCornus Kousaっていうんだよ。あそこに名札が付いているから見てみよう」と言って、名札を見るとなんとそこにはBenthamidia japonica と書かれているではありませんか! 「生兵法は大怪我のもと」の典型ですね。
最近は植物の分類の改定と改名が多いようで、頭の痛いところです。フランス語のサイトで調べると、いまだにCornus Kousaで調べる方がヒットする件数が格段に多いのですが、分類の学名変更に敏感な日本の植物園ではもうこの名前をつけているところは少ないのではないかと想像します。

<アメリカヤマボウシ vs. Japanese flowering dogwood>
日本人にとって、ハナミズキはヤマボウシのアメリカバージョンなのだから、ハナミズキの別名はアメリカハナミズキになります。逆に、アメリカ人にとっては、ヤマボウシはFlowering dogwood (ハナミズキ)の日本バージョンなので、Japanese flowering dogwood と呼ばれます。

<ミズキ属は世界に40種、日本に5種>
日本に自生するミズキ属は5種だそうです。そうするとその5種とは以下のものでしょうか?
1.ヤマボウシ
2.サンシュユ
3.ミズキ
4.クマノミズキ
5.ゴゼンタチバナ

<ヨーロッパには2種のミズキ属が自生>
1.セイヨウサンシュユ Cornus mas
2.セイヨウミズキ Cornus sanguinea (Swida sanguinea)

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2011年5月18日水曜日

キツネアザミ

[2911/05/14  千葉県印西市]
畑の脇にキク科のような植物
[2011/05/14  千葉県印西市]
アザミのような花です

【分類 / 学名】

科: キク科 Asteraceae / Compositae
属: キツネアザミ属 Hemistepta
種: キツネアザミ Hemistepta lyrata (Bunge) Bunge
英名: 不明
仏名: 不明
原産地: 台湾、中国、朝鮮半島、インド、オーストラリア、日本(本州・四国・九州・沖縄)


【観察】

日当たりのよい畑の脇にありました。一見してキク科です。花を見るとアザミによく似ていますが、トゲがありません。インターネットで検索してみたのですが、分からず、数日忘れていましたが、ある植物観察会に参加して、ついにこの植物の名前が分かりました。


【話題】

<キツネに化かされた?>
アザミだろうと思っていたら、本当のアザミではなかった。それでキツネに化かされたような、ということでキツネアザミとよばれるとのことです。

<欧米では超マイナー>
分布をみても理解できることですが、欧米に原産しない植物で、園芸品種になりそうもないのですから、一般の欧米人どころか、欧米の植物学者もほとんど興味を示さない植物のように見受けられます。

<史前帰化植物?>
多くのサイトで、キツネアザミもまた「史前帰化植物」として紹介されています。そもそも史前帰化植物とは何なのかを知りたくなって調べてみました。要約すると以下の通りです。

提唱者: 前川文夫(1908~1984)植物学者

有史前に日本に持ち込まれた植物を3つに分類。
1.水田耕作に伴って渡来した植物群(東南アジアの水田や沼沢地に共通な水田の雑草として適応した植物群)
2.麦栽培に伴って渡来した植物群(麦とともに芽生えて雑草として成長する麦畑の植物群)
3.有用植物として持ちこまれた植物群

例えば、キツネアザミは2の麦栽培に伴って渡来した植物群の一つとされています。

感想: 雄大なスケールで植物の伝播を描いた学説で魅力的です。ただし、地層に残された花粉分析、遺伝子分析などの研究の集積による地道な裏付けの努力を必要とする学説でもあるように思われます。裏付けの研究がどのように進められているのか知りたいところです。

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2011年5月17日火曜日

マムシグサ

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
なんともユニークな形の頭をした草がありました

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
帽子の下に何かありそうです

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
失礼して覗かせてもらいました



【分類 / 学名】

科: サトイモ科 Araceae
属: テンナンショウ属 Arisaema
種: マムシグサ Arisaema serratum (Thunb.) Schott
英名: なし(Japanese arisaema) (注1)
仏名: なし(注2)
原産地: 東アジア(中国、朝鮮半島、日本)


【観察】

北総花の丘公園を散歩中に見かけました。最初は、木かと思いましたが、茎に触れてみると草本でした。このようなユニークな形は始めてみましたので、気にはなっていたのですが、そのまま検索もせずにいました。本日、ある植物観察会に参加して、植物に詳しい方にカメラの映像を見てもらい、名前を教えてもらいました。「ミズバショウと同じ構造ですよ」と言われると、なるほど、帽子がなければ確かに似ています。


【話題】

<劇物、シュウ酸カルシウム
球根や葉にシュウ酸カルシウムの針状結晶が含まれており、うっかり食べると、口からのどのにかけて激痛があり、ひどい目にあうとのことです。そのようなわけで、インターネットの各サイトは「食べてはいけない」のオンパレードですが、ごくまれに、「アイヌ民族は毒抜きして食用にしていた」「飢饉の時は毒抜きして食べた」などの記述もみられます。また、英語のあるサイトでは、シュウ酸カルシウムは容易に中和できるという趣旨の記述もあります(注3)。実体はどうなのか気になります。

<幻想的な肉穂花序と死のトラップ仏炎苞
サトイモ科の植物は、穂状(すいじょう)花序の主軸が肉厚に膨らんだ、幻想的な印象を与える肉穂花序(にくすいかじょ)をもつ。穂の先端に花のない部分をもち、さまざまな形になるものもある。穂の根元から出る苞は、花序を包むような形になって、花びらの役割も担い、仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる。仏炎苞は花に寄ってくる昆虫を内部に閉じ込め、その滞在時間を長くして受粉の確率を高める構造になっているそうです。そのような恐ろしい死のトラップが仏炎と呼ばれるのもまた幻想的です。

(注1)Wikipediaの日本語版では英語の俗名としてJack in the pulpit を挙げていますが、これは北米原産の別種であるArisaema triphyllum の英語俗名なので、適切ではなさそうです。あるアメリカのサイトで見かけたJapanese arisaemaは学名と俗名のチャンポンで、苦し紛れの英俗名にも思えます。多くのサイトがcommon name: none としているので、「なし」と理解するのが順当なようです。敢えて、Japanese jack in the pulpit とでも表現すれば、最低限、通じるとは思います。

(注2) フランス語版のWikipediaによると、テンナンショウ属(約170種)が、ときおり "ariséme" と呼ばれるとあります。ヨーロッパにはない属のようなので、この言葉を聞いてピンとくるフランス人は専門家や植物オタクを除いては、いないのではないかと予測します。ましてや、そのうちの1種を呼ぶフランス語の俗語などはないようです。

(注3)
"The plant contains calcium oxylate crystals. These cause an extremely unpleasant sensation similar to needles being stuck into the mouth and tongue if they are eaten but they are easily neutralized by thoroughly drying or cooking the plant or by steeping it in water."
参考URL:http://www.pfaf.org/user/Plant.aspx?LatinName=Arisaema%20serratum



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【英仏語の勉強】

肉穂(にくすい)花序
英語:spadix (複数形 spadices)
仏語:spadice

仏炎苞
英語: spathe
仏語: spathe

キキョウソウ

[2011/05-16  千葉県印西市]
ホトケノザを巨大化して段々を多くしたような植物が


[2011/05/16  千葉県印西市]
キキョウによく似た花が咲いてます

【分類 / 学名】

科:キキョウ科 Campanulaceae
属:キキョウソウ属 Triodanis (旧 Specularia)
種:キキョウソウ Triodanis perfoliata (L.)Nieuw.  
英名:Venus' looking glass
仏名:Spéculaire perfoliée
原産地:北米

(注)上記の仏名はカナダのフランス語圏で使われているもので、フランス本国では知られていないようです。フランスでMiroir du Vénus (ビーナスの鏡)はヨーロッパ原産のキキョウ科レゴウシア属Legousia speculum-veneris という別属のものです。


【観察】

キキョウを検索してみたのですが、キキョウそのものではありませんでした。検索を続けて、ついにたどり着いたのは「キキョウソウ」でした。でも、思った通り、キキョウの仲間でした。


【話題】

ビーナスの鏡:本家争い>
ギリシア神話の美の女神ビーナスの面影を映す鏡とは、大きな賛辞を与えられたものです。しかしながら、この花の威光は北米大陸止まりのようです。フランス国内のサイトで検索すると、ヒット数の少なさや、フランス語の俗名が見つからないことから判断して、この花がフランス人の興味の対象外であることが分かります。

それもそのはず、ヨーロッパにはヨーロッパ原産のれっきとした「ビーナスの鏡」がすでに存在しているのですから。それは同じキキョウ科のレゴウシア属 Legousia speculum-veneris (L.) Fisch. ex A. DC. です。アメリカでは北米産のVenus' looking glass と区別するために、ヨーロッパ産のものをEuropean Venus' looking glass と呼んでいます(イギリスでは Large Venus's looking glassです)。ヨーロッパ産の栽培品種は「レゴウシア」「ブルーカーペット」などの名で日本に入っているようです。

<フランス語の俗名がないと不便?>
カナダのフランス語圏ではSpéculaire perfoliée で統一されているようですが、フランス国内でこの語を検索してもヒットしません。ですから、この表現ではフランス人にはチンプンカンプンだと思います。でも、やはりフランス本国の人たちに納得してもらえるフランス語の俗名があると便利でしょうね。そこで、アメリカではヨーロッパ産をEuropean Venus' looking glass と呼んでいるので、その発想を逆利用して、Miroir du Vénus américain と呼べば、植物好きならピンとくるのではないかと思います。

<日本伝来>
国立環境研究所の「侵入生物データベース」によると、観賞用に導入したものが野生化したようです。すでに、1911年に東京で標本化された記録があるとのことです。寒いところは苦手なようで、分布は福島県以南になっています。


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【英仏語の勉強】

学名で使われる perfoliata は「茎が葉を貫いたような」という意味で、当然ながら、それに対応する日本語、英語、フランス語があります。日本語では「貫穿葉(かんせんよう)」 という用語があるようですが、「貫穿葉」で検索してみると600件ほどの用例しかヒットせず、しかもそのほとんどが中国語のサイトです。そのような形態を実際に表わす場合、それほど定形化されておらず、「葉が茎を抱くような」「葉が茎を囲むような」「茎が葉を突き抜けたような」などが使われているようです。

日本語:(茎が葉を)突き抜けた
英語: perfoliate
仏語: perfolié

2011年5月16日月曜日

カキネガラシ

[2011/05/14  千葉県印西市]
水平に長く伸びた横枝が印象的
横枝の先端は上を向き花がついている
全体のイメージは燭台

[2011/05/14  千葉県印西市]
葉のアップ

[2911/05/14  千葉県印西市]
花のアップ。花弁のつき方が大雑把な印象


【分類 / 学名】

科: アブラナ科 Brassicaceae
属: キハナハタザオ属 Sisymbrium 
種: カキネガラシ Sisymbrium officinale (L.) Scop.
英名: Hedgemustard / Hedgeweed
仏名: Sisymbre officinal
原産地: ヨーロッパ(~西アジア)


【観察】

遠くから見ても、形のユニークさですぐにこの植物と認識できます。横枝が水平方向に長く伸びて、先端が上を向き、そこに黄色い花がついています。私には燭台のように見えます。


【話題】

カキネガラシの命名の由来>
横枝を水平方向に長く伸ばしているので、数株集まれば垣根になってしまうような印象を与えるので、「垣根状の芥子(からし)」という意味でカキネガラシです。この命名は英語のhedgemustard の直訳と思われます。

<日本への導入>
明治時代に、作物種子などに混入して移入。現在は日本全土で見られる。


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2011年5月15日日曜日

ブタナ

[2011/05/14  千葉県印西市]
空き地に繁茂する見なれた植物

[2011/05/14  千葉県北総花の丘公園]
タンポポに似た花、ロゼット、葉のない細長い茎


【分類 / 学名】

科: キク科 Asteraceae
属: エゾコウゾリナ属 Hypochaeris
種: ブタナ Hypochaeris radicata L.
英名: catsear / flatweed / false dandelion
仏名:  Chicorée pays / Chicorée-commune / Lastron sauvage /
            Porcelle enracinée / Salade de porc /  faux pissenlit
原産地: ヨーロッパ


【観察】

北海道、本州の広範な地域で見られるとのことですが、ここ北総でも基本の野草と言えそうです。日あたりのよい空き地などがあると、必ずといってよいほどこのブタナが見られます。遠くから見るとタンポポと間違いそうなのですが、近くから見れば誤認の恐れはなさそうです。

個人的な識別ポイントは、以下のようなものです。
1タンポポのようなロゼットがある。
2.葉のない細い緑色の非中空の茎が長く伸びており、一本だけの茎ものもあれば、途中で枝分かれしている茎もある。 
3.それぞれの茎の上端に花が一つつく。
4.花が終わるとタンポポのような綿毛になる。

タンポポとの識別のポイントは、薄黄緑色の中空の茎のタンポポに対して、ブタナは非中空で、細くて長くて固い緑色の茎です。


【話題】

タンポポモドキ
うっかりするとタンポポと見間違いそうなので、タンポポモドキとの異名もあるそうです。英語では、false dandelion、フランス語では、faux pissenlit と同じ発想の俗名がついているところが興味深いです。

<意外に多いタンポポに似た花>
タンポポに似た花がブタナだけならことは簡単なのですが、ブタナ以外にもタンポポのような花をつける植物は決して少なくないことに最近気づきました。タンポポとブタナの識別がタンポポに似たいろいろな花を楽しむための最初の一歩になりそうです。

<日本への導入>
ブタナは1933年に北海道で初確認され、その後、全国に広がったと言われています。その経緯が「北海道ブルーリスト」で分かります。
参考URL:http://bluelist.ies.hro.or.jp/db/detail.php?k=08&cd=440

<国立環境研究所侵入生物データベース>
このサイトの日本地図には特定の生物が日本のどこに繁茂しているかが描かれています。ブタナのページの日本地図は真っ赤で、ブタナが日本全土に広がっていることを示しています。なおブタナは「要注意外来生物」に指定されているとのことです。
参考URL:http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80570.html

要約すると、1933年に真駒内で初めて確認され、その後、全国に広まった。導入された原因は、牧草、緑化用の輸入種子に混入していた、となります。

<ブタナの命名の由来>
フランス語の俗名の一つ、Salade de porc (豚のサラダ菜)の日本語訳がブタナの名前の由来です。また、porcelle もブタporc を含む語です。それどころか、学名のHypochaeris すらもギリシャ語の「キクヂシャ(Hyosiris)」+「ブタ(choiros)」からできた言葉と考えられているようです。つまり、この植物とブタの因縁はかなり深く長いようです。

<豚が食べるのか?人が食べるのか?>
ヘビイチゴをヘビが食べるわけではないし、カラスノエンドウをカラスが食べるわけでもない、とすればブタナと命名されていても、ブタが食べるかどうか疑わしいと考えました。そこでフランス語のサイトを調べてみると、やはりブタが好んで食べるためこの名がついたようです。

ある獣医学校のサイトに以下のような記述がありました。
" Il est à noter que la porcelle est considérée comme commestible pour l’homme ;  On l’appelle également la porcelle "salade-de-porc" car le porc (en grec Choiros ) est réputé apprécier cette plante"
(訳:ブタナは人が食べることができるとみなされていることに留意すべきです。また、同様にブタナを「ブタのサラダ菜」と呼びますが、それはブタ[ギリシャ語ではChoiros]がこの植物を好むとみなされているためです。)
参考URL:http://centre-equestre-veto.envt.fr/spip/spip.php?article268

次に、人間(フランス人)が本当にブタナを食べているのかという話題ですが、これは「日本人は本当にイナゴを食べているのか」という質問に似ていると思います。

簡単に言えば、ブタナはフランスの一部の地域でローカルな食材として食べられており、イナゴは日本の一部の地域でローカルな食材として食べられているということです。そして、その食材を食べる習慣がない人たちは、「えっ?△△地方ではブタナ(イナゴ)を食べるの?それは驚いた。」という反応を示すものです。フランスのブログなどでこのような反応をしている人たちを直接、確認しました。

英語版のWikipediaにはブタナの料理に関する記述がありましたので、英語の勉強の教材として以下に載せておきます。

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【英語の練習】

"All parts of the catsear plant are edible; however, the leaves and roots are those most often harvested. The leaves are bland in taste but can be eaten raw in salads, steamed, or used in stir-fries. Older leaves can become tough and fibrous, but younger leaves make for good eating. In contrast to the edible leaves of dandelion, catsear leaves only rarely have some bitterness. In Crete, Greece, the leaves of a variety called pachies (παχιές) or agrioradika (αγριοράδικα) are eaten boiled or cooked in steam by the locals.
The root can be roasted and ground to form a coffee substitute."
参考URL:http://en.wikipedia.org/wiki/Catsear

訳:ブタナの全ての部分が食べられますが、葉と根がもっともしばしば食用に採取される部分です。葉は無味ですが、(サラダで)生で、蒸して、あるいは、炒めて食べることができます。葉は成長すると固く繊維が多くなりますが、若い葉は美味しく食べられます。タンポポの食べられる葉とは対照的に、ブタナの葉にはきわめてまれにしか苦みがありません。クレタ島やギリシアではpachies または agrioradika と呼ばれる品種の葉が土地の人々によって、茹でたり、蒸したりして食されています。根は炒って挽いてコーヒーの代用品にされます。