2011年5月20日金曜日

フタリシズカ

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
日陰の場所にひっそりと咲いていました

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
花穂がどう見ても一本しかないみたいです


【分類 / 学名】

科: センリョウ科 Chloranthaceae
属: チャラン属 Chloranthus
種: フタリシズカ Chloranthus serratus
英名: なし (Serrate Leaf Chloranthus )
仏名: なし


【日本語表記】

二人静(ふたりしずか)


【観察】

ネット上のサイト情報では「花穂は通常2本だが、2~5本とまちまち」と書かれているものが多いようです。でも、この写真のものは一本のみでした。改めて検索してみると、「花穂が一本のみのものもある」と書かれた説明をいくつか見つけることが出来て安心しました。一人ぼっちのフタリシズカでちょっと寂しいですが、これが初めて認識したフタリシズカとなりました。


【話題】

<静御前の影>
愛する義経の逃避行に同行することもかなわず、捕捉され鎌倉に召しだされ、義経の兄頼朝の前で屈辱の舞を舞わされ、出産した義経の子は即座に殺され、その後の足取りは記録にも残らず、各地に静御前伝説として残るのみ。そのような静御前の生涯と重ねあわされたこの花は、日陰にひっそりと咲き、何も語りません。

<この二人は誰と誰?>
能の「二人静」では、吉野勝手明神の正月の神事で菜摘みに行って静御前の霊に遭遇した菜摘み女と静御前の霊ということになります。静御前伝説では、静御前とその子供ということになりそうです。静御前の生涯を考えると、静御前の母親「磯野禅尼」と静御前でしょうか。それとも、あの世で再会した義経と静御前でしょうか。

<欧米ではマイナーな植物>
この花の名前が「フタリシズカ」でなかったなら、この植物は日本人の植物愛好家にすらマイナーな存在だったかもしれません。マイナーである一つの証拠としては、チャラン属が何種あるかすらはっきりしていないみたいです。あるサイトでは、「世界に4種で、うち3種が日本で見られる」とあり、また他のサイトでは18種とするものもありました。おおむね、アジアの温帯から熱帯にかけて分布するとの説明です。欧米に存在しない地味な「チャラン属」ですので、一般欧米人の興味をひかず、結果、一般名称が生まれるはずもありません。欧米人に説明する機会が来るとは思えませんが、万一そのようなことになったら、静御前の伝説を詳細に語って、学名または日本語でそのまま記憶してもらおうと思います。


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ヤマボウシ

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
木に白い花

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
花は上を向いています

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
花と葉のアップ撮影

【分類 / 学名】

科: ミズキ科 Cornaceae
属: ミズキ属 Cornus

亜属: ヤマボウシ亜属 Benthamidia 

種: Benthamidia japonica (syn. Cornus kousa)
英名: Japanese Flowering Dogwood / Kousa dogwood
仏名: Cornouiller du Japon 原産地: 日本


【日本語表記】

山法師 / 山帽子

どちらの表記もこの樹花の雰囲気をとらえているように思えます。花の中心にある花穂が坊主頭で、花弁は白装束、それで山法師。花が上を向いて、花穂が帽子の頭頂のポッチに見えるので花全体が帽子のようなので山帽子。「帽子」という言葉は「烏帽子」に見られるように古くからある言葉ですね。法師も帽子も古くから日本にあったもので、優劣をつけがたいのですが、どちらが最初に使われたのか知りたいものです。


【観察】

兄弟分のハナミズキの花が終わって、しばらくたってから、このヤマボウシが花をつけます。どちらの花も上を向き、四枚の大きな花弁をもち、花穂がまるっぽいので、確かに同じ属の花だと納得します。葉については、形がトサミズキやマンサクの葉に似ているなというのが第一印象です。


【話題】

<さようなら Cornus Kousa の想い出>
箱根地方ではヤマボウシを「くさ」と呼んだのでそれがKousa として学名に取り込まれたそうです。なるほど、箱根の温泉郷はすでに幕末から横浜に滞在していた欧米人に人気のあるリゾートだったのですから、十分にあり得ることだと思います。
個人的には、Cornus Kousa は苦労して記憶した貴重な二つ目の植物の学名でした。最初のはスギのCryptomeria Japonica です。あるとき、通訳ガイド数名で東御苑の下見をしていたときに、知ったかぶりをして、「ヤマボウシの学名はCornus Kousaっていうんだよ。あそこに名札が付いているから見てみよう」と言って、名札を見るとなんとそこにはBenthamidia japonica と書かれているではありませんか! 「生兵法は大怪我のもと」の典型ですね。
最近は植物の分類の改定と改名が多いようで、頭の痛いところです。フランス語のサイトで調べると、いまだにCornus Kousaで調べる方がヒットする件数が格段に多いのですが、分類の学名変更に敏感な日本の植物園ではもうこの名前をつけているところは少ないのではないかと想像します。

<アメリカヤマボウシ vs. Japanese flowering dogwood>
日本人にとって、ハナミズキはヤマボウシのアメリカバージョンなのだから、ハナミズキの別名はアメリカハナミズキになります。逆に、アメリカ人にとっては、ヤマボウシはFlowering dogwood (ハナミズキ)の日本バージョンなので、Japanese flowering dogwood と呼ばれます。

<ミズキ属は世界に40種、日本に5種>
日本に自生するミズキ属は5種だそうです。そうするとその5種とは以下のものでしょうか?
1.ヤマボウシ
2.サンシュユ
3.ミズキ
4.クマノミズキ
5.ゴゼンタチバナ

<ヨーロッパには2種のミズキ属が自生>
1.セイヨウサンシュユ Cornus mas
2.セイヨウミズキ Cornus sanguinea (Swida sanguinea)

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2011年5月18日水曜日

キツネアザミ

[2911/05/14  千葉県印西市]
畑の脇にキク科のような植物
[2011/05/14  千葉県印西市]
アザミのような花です

【分類 / 学名】

科: キク科 Asteraceae / Compositae
属: キツネアザミ属 Hemistepta
種: キツネアザミ Hemistepta lyrata (Bunge) Bunge
英名: 不明
仏名: 不明
原産地: 台湾、中国、朝鮮半島、インド、オーストラリア、日本(本州・四国・九州・沖縄)


【観察】

日当たりのよい畑の脇にありました。一見してキク科です。花を見るとアザミによく似ていますが、トゲがありません。インターネットで検索してみたのですが、分からず、数日忘れていましたが、ある植物観察会に参加して、ついにこの植物の名前が分かりました。


【話題】

<キツネに化かされた?>
アザミだろうと思っていたら、本当のアザミではなかった。それでキツネに化かされたような、ということでキツネアザミとよばれるとのことです。

<欧米では超マイナー>
分布をみても理解できることですが、欧米に原産しない植物で、園芸品種になりそうもないのですから、一般の欧米人どころか、欧米の植物学者もほとんど興味を示さない植物のように見受けられます。

<史前帰化植物?>
多くのサイトで、キツネアザミもまた「史前帰化植物」として紹介されています。そもそも史前帰化植物とは何なのかを知りたくなって調べてみました。要約すると以下の通りです。

提唱者: 前川文夫(1908~1984)植物学者

有史前に日本に持ち込まれた植物を3つに分類。
1.水田耕作に伴って渡来した植物群(東南アジアの水田や沼沢地に共通な水田の雑草として適応した植物群)
2.麦栽培に伴って渡来した植物群(麦とともに芽生えて雑草として成長する麦畑の植物群)
3.有用植物として持ちこまれた植物群

例えば、キツネアザミは2の麦栽培に伴って渡来した植物群の一つとされています。

感想: 雄大なスケールで植物の伝播を描いた学説で魅力的です。ただし、地層に残された花粉分析、遺伝子分析などの研究の集積による地道な裏付けの努力を必要とする学説でもあるように思われます。裏付けの研究がどのように進められているのか知りたいところです。

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2011年5月17日火曜日

マムシグサ

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
なんともユニークな形の頭をした草がありました

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
帽子の下に何かありそうです

[2011/05/16  千葉県北総花の丘公園]
失礼して覗かせてもらいました



【分類 / 学名】

科: サトイモ科 Araceae
属: テンナンショウ属 Arisaema
種: マムシグサ Arisaema serratum (Thunb.) Schott
英名: なし(Japanese arisaema) (注1)
仏名: なし(注2)
原産地: 東アジア(中国、朝鮮半島、日本)


【観察】

北総花の丘公園を散歩中に見かけました。最初は、木かと思いましたが、茎に触れてみると草本でした。このようなユニークな形は始めてみましたので、気にはなっていたのですが、そのまま検索もせずにいました。本日、ある植物観察会に参加して、植物に詳しい方にカメラの映像を見てもらい、名前を教えてもらいました。「ミズバショウと同じ構造ですよ」と言われると、なるほど、帽子がなければ確かに似ています。


【話題】

<劇物、シュウ酸カルシウム
球根や葉にシュウ酸カルシウムの針状結晶が含まれており、うっかり食べると、口からのどのにかけて激痛があり、ひどい目にあうとのことです。そのようなわけで、インターネットの各サイトは「食べてはいけない」のオンパレードですが、ごくまれに、「アイヌ民族は毒抜きして食用にしていた」「飢饉の時は毒抜きして食べた」などの記述もみられます。また、英語のあるサイトでは、シュウ酸カルシウムは容易に中和できるという趣旨の記述もあります(注3)。実体はどうなのか気になります。

<幻想的な肉穂花序と死のトラップ仏炎苞
サトイモ科の植物は、穂状(すいじょう)花序の主軸が肉厚に膨らんだ、幻想的な印象を与える肉穂花序(にくすいかじょ)をもつ。穂の先端に花のない部分をもち、さまざまな形になるものもある。穂の根元から出る苞は、花序を包むような形になって、花びらの役割も担い、仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる。仏炎苞は花に寄ってくる昆虫を内部に閉じ込め、その滞在時間を長くして受粉の確率を高める構造になっているそうです。そのような恐ろしい死のトラップが仏炎と呼ばれるのもまた幻想的です。

(注1)Wikipediaの日本語版では英語の俗名としてJack in the pulpit を挙げていますが、これは北米原産の別種であるArisaema triphyllum の英語俗名なので、適切ではなさそうです。あるアメリカのサイトで見かけたJapanese arisaemaは学名と俗名のチャンポンで、苦し紛れの英俗名にも思えます。多くのサイトがcommon name: none としているので、「なし」と理解するのが順当なようです。敢えて、Japanese jack in the pulpit とでも表現すれば、最低限、通じるとは思います。

(注2) フランス語版のWikipediaによると、テンナンショウ属(約170種)が、ときおり "ariséme" と呼ばれるとあります。ヨーロッパにはない属のようなので、この言葉を聞いてピンとくるフランス人は専門家や植物オタクを除いては、いないのではないかと予測します。ましてや、そのうちの1種を呼ぶフランス語の俗語などはないようです。

(注3)
"The plant contains calcium oxylate crystals. These cause an extremely unpleasant sensation similar to needles being stuck into the mouth and tongue if they are eaten but they are easily neutralized by thoroughly drying or cooking the plant or by steeping it in water."
参考URL:http://www.pfaf.org/user/Plant.aspx?LatinName=Arisaema%20serratum



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【英仏語の勉強】

肉穂(にくすい)花序
英語:spadix (複数形 spadices)
仏語:spadice

仏炎苞
英語: spathe
仏語: spathe

キキョウソウ

[2011/05-16  千葉県印西市]
ホトケノザを巨大化して段々を多くしたような植物が


[2011/05/16  千葉県印西市]
キキョウによく似た花が咲いてます

【分類 / 学名】

科:キキョウ科 Campanulaceae
属:キキョウソウ属 Triodanis (旧 Specularia)
種:キキョウソウ Triodanis perfoliata (L.)Nieuw.  
英名:Venus' looking glass
仏名:Spéculaire perfoliée
原産地:北米

(注)上記の仏名はカナダのフランス語圏で使われているもので、フランス本国では知られていないようです。フランスでMiroir du Vénus (ビーナスの鏡)はヨーロッパ原産のキキョウ科レゴウシア属Legousia speculum-veneris という別属のものです。


【観察】

キキョウを検索してみたのですが、キキョウそのものではありませんでした。検索を続けて、ついにたどり着いたのは「キキョウソウ」でした。でも、思った通り、キキョウの仲間でした。


【話題】

ビーナスの鏡:本家争い>
ギリシア神話の美の女神ビーナスの面影を映す鏡とは、大きな賛辞を与えられたものです。しかしながら、この花の威光は北米大陸止まりのようです。フランス国内のサイトで検索すると、ヒット数の少なさや、フランス語の俗名が見つからないことから判断して、この花がフランス人の興味の対象外であることが分かります。

それもそのはず、ヨーロッパにはヨーロッパ原産のれっきとした「ビーナスの鏡」がすでに存在しているのですから。それは同じキキョウ科のレゴウシア属 Legousia speculum-veneris (L.) Fisch. ex A. DC. です。アメリカでは北米産のVenus' looking glass と区別するために、ヨーロッパ産のものをEuropean Venus' looking glass と呼んでいます(イギリスでは Large Venus's looking glassです)。ヨーロッパ産の栽培品種は「レゴウシア」「ブルーカーペット」などの名で日本に入っているようです。

<フランス語の俗名がないと不便?>
カナダのフランス語圏ではSpéculaire perfoliée で統一されているようですが、フランス国内でこの語を検索してもヒットしません。ですから、この表現ではフランス人にはチンプンカンプンだと思います。でも、やはりフランス本国の人たちに納得してもらえるフランス語の俗名があると便利でしょうね。そこで、アメリカではヨーロッパ産をEuropean Venus' looking glass と呼んでいるので、その発想を逆利用して、Miroir du Vénus américain と呼べば、植物好きならピンとくるのではないかと思います。

<日本伝来>
国立環境研究所の「侵入生物データベース」によると、観賞用に導入したものが野生化したようです。すでに、1911年に東京で標本化された記録があるとのことです。寒いところは苦手なようで、分布は福島県以南になっています。


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【英仏語の勉強】

学名で使われる perfoliata は「茎が葉を貫いたような」という意味で、当然ながら、それに対応する日本語、英語、フランス語があります。日本語では「貫穿葉(かんせんよう)」 という用語があるようですが、「貫穿葉」で検索してみると600件ほどの用例しかヒットせず、しかもそのほとんどが中国語のサイトです。そのような形態を実際に表わす場合、それほど定形化されておらず、「葉が茎を抱くような」「葉が茎を囲むような」「茎が葉を突き抜けたような」などが使われているようです。

日本語:(茎が葉を)突き抜けた
英語: perfoliate
仏語: perfolié

2011年5月16日月曜日

カキネガラシ

[2011/05/14  千葉県印西市]
水平に長く伸びた横枝が印象的
横枝の先端は上を向き花がついている
全体のイメージは燭台

[2011/05/14  千葉県印西市]
葉のアップ

[2911/05/14  千葉県印西市]
花のアップ。花弁のつき方が大雑把な印象


【分類 / 学名】

科: アブラナ科 Brassicaceae
属: キハナハタザオ属 Sisymbrium 
種: カキネガラシ Sisymbrium officinale (L.) Scop.
英名: Hedgemustard / Hedgeweed
仏名: Sisymbre officinal
原産地: ヨーロッパ(~西アジア)


【観察】

遠くから見ても、形のユニークさですぐにこの植物と認識できます。横枝が水平方向に長く伸びて、先端が上を向き、そこに黄色い花がついています。私には燭台のように見えます。


【話題】

カキネガラシの命名の由来>
横枝を水平方向に長く伸ばしているので、数株集まれば垣根になってしまうような印象を与えるので、「垣根状の芥子(からし)」という意味でカキネガラシです。この命名は英語のhedgemustard の直訳と思われます。

<日本への導入>
明治時代に、作物種子などに混入して移入。現在は日本全土で見られる。


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2011年5月15日日曜日

ブタナ

[2011/05/14  千葉県印西市]
空き地に繁茂する見なれた植物

[2011/05/14  千葉県北総花の丘公園]
タンポポに似た花、ロゼット、葉のない細長い茎


【分類 / 学名】

科: キク科 Asteraceae
属: エゾコウゾリナ属 Hypochaeris
種: ブタナ Hypochaeris radicata L.
英名: catsear / flatweed / false dandelion
仏名:  Chicorée pays / Chicorée-commune / Lastron sauvage /
            Porcelle enracinée / Salade de porc /  faux pissenlit
原産地: ヨーロッパ


【観察】

北海道、本州の広範な地域で見られるとのことですが、ここ北総でも基本の野草と言えそうです。日あたりのよい空き地などがあると、必ずといってよいほどこのブタナが見られます。遠くから見るとタンポポと間違いそうなのですが、近くから見れば誤認の恐れはなさそうです。

個人的な識別ポイントは、以下のようなものです。
1タンポポのようなロゼットがある。
2.葉のない細い緑色の非中空の茎が長く伸びており、一本だけの茎ものもあれば、途中で枝分かれしている茎もある。 
3.それぞれの茎の上端に花が一つつく。
4.花が終わるとタンポポのような綿毛になる。

タンポポとの識別のポイントは、薄黄緑色の中空の茎のタンポポに対して、ブタナは非中空で、細くて長くて固い緑色の茎です。


【話題】

タンポポモドキ
うっかりするとタンポポと見間違いそうなので、タンポポモドキとの異名もあるそうです。英語では、false dandelion、フランス語では、faux pissenlit と同じ発想の俗名がついているところが興味深いです。

<意外に多いタンポポに似た花>
タンポポに似た花がブタナだけならことは簡単なのですが、ブタナ以外にもタンポポのような花をつける植物は決して少なくないことに最近気づきました。タンポポとブタナの識別がタンポポに似たいろいろな花を楽しむための最初の一歩になりそうです。

<日本への導入>
ブタナは1933年に北海道で初確認され、その後、全国に広がったと言われています。その経緯が「北海道ブルーリスト」で分かります。
参考URL:http://bluelist.ies.hro.or.jp/db/detail.php?k=08&cd=440

<国立環境研究所侵入生物データベース>
このサイトの日本地図には特定の生物が日本のどこに繁茂しているかが描かれています。ブタナのページの日本地図は真っ赤で、ブタナが日本全土に広がっていることを示しています。なおブタナは「要注意外来生物」に指定されているとのことです。
参考URL:http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80570.html

要約すると、1933年に真駒内で初めて確認され、その後、全国に広まった。導入された原因は、牧草、緑化用の輸入種子に混入していた、となります。

<ブタナの命名の由来>
フランス語の俗名の一つ、Salade de porc (豚のサラダ菜)の日本語訳がブタナの名前の由来です。また、porcelle もブタporc を含む語です。それどころか、学名のHypochaeris すらもギリシャ語の「キクヂシャ(Hyosiris)」+「ブタ(choiros)」からできた言葉と考えられているようです。つまり、この植物とブタの因縁はかなり深く長いようです。

<豚が食べるのか?人が食べるのか?>
ヘビイチゴをヘビが食べるわけではないし、カラスノエンドウをカラスが食べるわけでもない、とすればブタナと命名されていても、ブタが食べるかどうか疑わしいと考えました。そこでフランス語のサイトを調べてみると、やはりブタが好んで食べるためこの名がついたようです。

ある獣医学校のサイトに以下のような記述がありました。
" Il est à noter que la porcelle est considérée comme commestible pour l’homme ;  On l’appelle également la porcelle "salade-de-porc" car le porc (en grec Choiros ) est réputé apprécier cette plante"
(訳:ブタナは人が食べることができるとみなされていることに留意すべきです。また、同様にブタナを「ブタのサラダ菜」と呼びますが、それはブタ[ギリシャ語ではChoiros]がこの植物を好むとみなされているためです。)
参考URL:http://centre-equestre-veto.envt.fr/spip/spip.php?article268

次に、人間(フランス人)が本当にブタナを食べているのかという話題ですが、これは「日本人は本当にイナゴを食べているのか」という質問に似ていると思います。

簡単に言えば、ブタナはフランスの一部の地域でローカルな食材として食べられており、イナゴは日本の一部の地域でローカルな食材として食べられているということです。そして、その食材を食べる習慣がない人たちは、「えっ?△△地方ではブタナ(イナゴ)を食べるの?それは驚いた。」という反応を示すものです。フランスのブログなどでこのような反応をしている人たちを直接、確認しました。

英語版のWikipediaにはブタナの料理に関する記述がありましたので、英語の勉強の教材として以下に載せておきます。

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【英語の練習】

"All parts of the catsear plant are edible; however, the leaves and roots are those most often harvested. The leaves are bland in taste but can be eaten raw in salads, steamed, or used in stir-fries. Older leaves can become tough and fibrous, but younger leaves make for good eating. In contrast to the edible leaves of dandelion, catsear leaves only rarely have some bitterness. In Crete, Greece, the leaves of a variety called pachies (παχιές) or agrioradika (αγριοράδικα) are eaten boiled or cooked in steam by the locals.
The root can be roasted and ground to form a coffee substitute."
参考URL:http://en.wikipedia.org/wiki/Catsear

訳:ブタナの全ての部分が食べられますが、葉と根がもっともしばしば食用に採取される部分です。葉は無味ですが、(サラダで)生で、蒸して、あるいは、炒めて食べることができます。葉は成長すると固く繊維が多くなりますが、若い葉は美味しく食べられます。タンポポの食べられる葉とは対照的に、ブタナの葉にはきわめてまれにしか苦みがありません。クレタ島やギリシアではpachies または agrioradika と呼ばれる品種の葉が土地の人々によって、茹でたり、蒸したりして食されています。根は炒って挽いてコーヒーの代用品にされます。

2011年5月14日土曜日

エニシダ


[2011/05/01  千葉県印西市内野]
小さな児童公園の片隅で黄色い花を咲かせた木
[2011/05/01  千葉県印西市内野]
あえて形容すれば「ぺろりと出した黄色い舌」かなあ


【分類 / 学名】

科: マメ科 Fabaceae
属: エニシダ属 Cytisus
種: エニシダ Cytisus scoparius
英名: Common Broom / Scotch Broom
仏名: Genêt à balais
原産地: ヨーロッパ中西部


【観察】

自宅近くの小さな児童公園の一角に変わった形の黄色い樹花が咲いているのに気づきました。花の形のあまりのユニークさに、どう表現して良いのやら言葉につまってしまいます。敢えて言えば、「ぺろりと出した黄色い舌」、「干しイカ」のような印象を受けます。葉はクロバーのように三出複葉。これだけ派手な花を今まで意識しなかったのが不思議なくらいです。

(*追記) ついに、この花にピッタリの形容を思いつきました。「股旅者」ってどうでしょうか?自分的にはもうこれ以上の表現はないと思えるのですが。



[2011/05/14  千葉県印西市内野]
【話題】

<魔女の箒(ほうき)の原料>
空想の産物である魔女の箒というよりも、普通の箒の材料だったのでしょうね。そのような由来で、エニシダ属の木の英語俗名は Broom で、まさにホウキです。フランス語の俗名にもホウキを意味する balai が使われています。

<和名エニシダの由来>
ヒトツバエニシダ属 (Genista) の英語読みジェニスタがなまってエニシダになったという説があるそうです。別名のエニスダはもっとジェニスタに近い音ですね。

<日本伝来はオランダから中国経由で?>
多くのサイトに「エニシダは江戸時代にオランダから中国経由で日本に伝来した」と書かれているのですが、その根拠になる情報や資料を明示している記述はほぼ皆無です。どなたか権威的な雰囲気を持つ方が、何かを記述をすると、それが次々とコピーされて、自己増殖していく現象があるのではないかと思えます。「どのサイトを見ても、そのように書いているのだから、自分もそう書いて問題ないだろう」という心理が働いて、根拠を確認しないまま、同じような記述がインターネット世界のいたるところに顔を出す現象ではないかと思います。

中国経由で入ってきたのなら、エニシダと呼ばれずに、むしろ、金雀枝を音読したり訓読した名前になったのではないでしょうか?しかし、逆に考えれば、直接オランダから入ってきたのなら金雀枝という漢字をあてることはなかったかもしれません。いや、教養のある日本人がこのあて字を考え出した可能性もあります。

それとも、中国で栽培が確立していたエニシダをオランダ人が長崎まで運んで、オランダ訛りの名前で日本人に紹介したのでしょうか?もしそうだとしたら、日本人はエニシダが中国経由であるということをどのようにして知ったのでしょうか?このように、よりどころとなる資料がないと、考えや想像は堂々巡りを繰り返すしかありません。

<エニシダ属の学名の由来>
属名 Cytisus は、古いギリシャ語のクローヴァーを意味する kytisso に由来するそうです。この由来の説明を読むと、なるほど、エニシダはクローヴァーと同じ三枚の葉が一か所から出る三出複葉。納得がいきます。

<エニシダの薬効>
薬学の世界では、茎や葉を日干しにしたものを「エニシダ枝」と呼び、硫酸スパルテインという薬の製薬原料として使われているそうです。心臓疾患やむくみの治療薬となり、また、子宮収縮薬、頻脈、不整脈治療薬として使われるそうです。花のついた茎葉は、利尿、瀉下、止血、不整脈、心悸亢進、強心薬としても使われるとのことです。有毒要素も含むので素人療法は厳禁です。

<種が15メートルも飛ぶ?>
エニシダの種は成熟すると殻が激しく爆発して遠くへ飛ぶことが知られているそうで、Wikipediaによると「時には15mほど飛んでいくこともある」そうです。

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【フランス語の勉強】

フランス語版のWikipediaに以下の表現がありました。
"La fabrication de balais (d'ou il tire son nom) a été importante dans tout l'ouest de la France. Il était également utilisé en remplacement du chaume dans certaines montagnes, pour couvrir les toits. On peut encore trouver quelques maisons de ce type en haute Ardèche et en Lozère."

訳:箒の製造はかつてフランスの西部全域で重要なものでした(名前はそのことに由来しています)。エニシダは一部の山岳地方で屋根を葺くために、藁(chaume)の代わりに使われました。今でも、アルデシュ県の高地やロゼール県でこの種の家屋を何軒か見ることができます。

ニワゼキショウ


[2011/05/06  千葉県北総花の丘公園]
このところ紫色の六枚の花弁の小さな花が目立ってきました



【分類 / 学名】

科: アヤメ科 Iridaceae
属: ニワゼキショウ属 Sisyrinchium

種: ニワゼキショウ Sisyrinchium rosulatum
英名: Annual blue-eyed grass
仏名: Bermudienne
原産地: 北米


【観察】

花径が5mm ほどの小さな花の植物です。ここ北総花の丘公園、その周辺の里山で目につくようになりました。


【話題】

<アヤメ科の植物>
あの大きなアヤメと同じ科の植物でした。同じ科どころか、同じ属でも草丈が大から小までいろいろあるのが常であることを知りましたが、それでも、この二つの植物が親類であると知ることはちょっと楽しいです。ニワゼキショウとアヤメとの花期が重なっているのがまたいいですね。

<和名:庭石菖の由来>
庭によく生える「石菖」に似た植物なので庭石菖(にわぜきしょう)とのことです。セキショウ(石菖)とはサトイモ科ショウブ属の植物で、山野の水辺などに見られるそうです。

<ショウブ(菖蒲)はサトイモ科でハナショウブ(花菖蒲)やアヤメはアヤメ科>
同じ「菖」の字で表わされる植物なのに、セキショウ(石菖)やショウブ(菖蒲)はサトイモ科で、ハナショウブ(花菖蒲)やアヤメ(菖蒲)やニワゼキショウ(庭石菖)はアヤメ科。異なる科や属の植物が同類のような名前(特に俗名)をもつのは植物の世界では珍しくもないことですが、頭の整理整頓が必要になります。

<北米からの帰化植物>
明治の中ごろに北米から渡来したとありあます。多くのサイトでは、観賞用に渡来したものが野生化したとしていますが、別のサイトでは、雑草として渡来して日本に広がったとして、「観賞渡来説」を否定しています。個人的な直感では、「明治の中ごろなら、欧米には、日本人がまだ見たことのなかった、人目を引く観賞用の植物が何百もあっただろうに、このような花径5ミリほどの目立たない花の植物をわざわざ観賞用として取り寄せるだろうか?」と考え、「雑草渡来説」に一票を投じたいところです。

<欧米サイトでは Sisyrinchium rosulatum は白っぽい花>
Google で「アメリカ合衆国」とか「フランス語」などのサイトに限定して検索し、それらのサイトでこの学名の花の写真を見ると、そこにあるのは、基本が白色で中心部が紫がかった花です。自分が知っている「赤紫色のニワゼキショウ」とはまるで別物のように思えます。「観賞渡来説」といい、花の色の違いといい、何か怪しげなものを感じます。このなぞ解きをしてくれる説明を探す必要がありそうです。

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2011年5月12日木曜日

コデマリ

[2011/05/05  千葉県北総花の丘公園]
公園のそこここに植えられている季節の基本の花

[2011/05/03  千葉県北総花の丘公園]
花をアップで撮りました


【分類 / 学名】

科: バラ科 Rosaceae
属: シモツケ属 Spiraea
種: コデマリ Spiraea cantoniensis Lour.
英名: Reeves' meadowsweet / Double Bridal Wreath Spiraea / Reeve´s Spiraea
仏名: Spirée de Canton
原産地: 中国中南部


【観察】

公園などの基本植栽の一つのようです。ここ北総花の丘公園でも、そこかしこに植えられており、素晴らしい花を咲かせています。

【話題】

<名前の由来>
名前の由来はわざわざ調べるまでもなく、花を見れば一目瞭然です。小さな花が半円球状の集団を形成して、まるで、幼い子供が遊ぶ「小さな手まり」、すなわち「コデマリ」に見えるからですね。実体の特徴を良くとらえていて、優雅で、だれでもしっくりと受け入れられる名前です。全ての花がこのような命名だとよいのですが。

<渡来>
すでに江戸時代初期には「こでまり」の名前で呼ばれていたとありますので、渡来は更にさかのぼるのでしょうね。
<俗名>
シモツケ属の植物は、英語俗名では meadowsweet、フランス語ではspirée ですが、英語では学名のspiraea (発音:スパイリーア)もそのまま使われているようです。

<兄弟分>
ユキヤナギがシモツケ属ですね。確かに、一枚目の写真を見ると、長い枝にびっしりと花が咲く風情がユキヤナギに似ています。遠くから見らたら、見わけは難しいかもしれません。幸いなことに開花期が違うので、それさえ意識していれば遠くからでも識別できますね。

シモツケ(Spiraea japonica)はシモツケ属の日本代表ですね。やはり、○○○japonica のように名付けられた植物は通訳案内士として気になります。下野国(しもつけのくに:現在の栃木県)に産したことがシモツケの由来だそうです。

Wikipediaによるとシモツケ属は「北半球の温帯から亜寒帯にかけて約120種、日本では12種が知られ、うち10(11)種が自生する。」とあります。英語版のWikipediaでは80-100種となっています。この数字の違いは何が原因なのでしょうか?まさか、多くが絶滅したのではないでしょう。ひょっとすると、かつてシモツケ属に含まれていたけれど、最近の遺伝子解析に基づく分類の見直しで、Filipendula 属と Aruncus 属とがシモツケ属から分家して、別の属を構えたとありますので、このあたりの解釈の違いがこのような数字の違いになっているのでしょうか?

<雑感>
ここしばらく、知らない花を見つけては(ほとんどが知らない花ですが)、その名前を探し出すことに熱中していました。何といっても4月~5月は、次から次と咲きますので。でも、一年で主要な花をすべて追跡することなど、とてもできない相談ですから、すでに知っている植物をしっかり調べて整理して行くことも大事だと思い直しました。いずれにしても、「継続は力なり」で、中断しないことが肝要だと思います。

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2011年5月11日水曜日

モモイロヒルザキツキミソウ

[2011/05/11  千葉県北総花の丘公園]
朝の散歩、小雨の中でも咲いてました

[2011/05/11 千葉県北総花の丘公園]
四裂した雌しべの花柱、T字の雄しべの葯

【分類 / 学名】

科: アカバナ科 Onagraceae
属: マツヨイグサ属 Oenothera
種: モモイロヒルザキツキミソウ Oenothera speciosa Nutt. var. childsii Munz
英名: Pinkladies / Showy evening primrose (ヒルザキツキミソウと同じ呼称)
仏名: Primevère rose du Missouri / Onagre élégant / Oenothère élégante ( ヒルザキツキミソウと同じ呼称)
原産地: 北米



【観察】
 
Wikipediaによると、マツヨイグサ属には125種があり、全てが南北アメリカ原産だそうです。そのうち日本で見られる主な種として16種が記載されています。
 
アレチマツヨイグサ Oenothera parviflora
オオマツヨイグサ Oenothera erythrosepala
オニマツヨイグサ Oenothera grandiflora
キダチマツヨイグサ Oenothera fruticosa
コマツヨイグサ Oenothera laciniata
シモフリマツヨイグサ Oenothera glauca
チャボツキミソウ Oenothera acaulis
チャボマツヨイグサ Oenothera triloba
ツキミソウ Oenothera tetraptera
ハマベマツヨイグサ Oenothera humifusa
ヒナマツヨイグサ Oenothera perennis
ヒルザキツキミソウ Oenothera speciosa
マツヨイグサ Oenothera stricta, Oenothera odorata
ミズーリマツヨイグサ Oenothera missouriensis
メマツヨイグサ Oenothera biennis
ユウゲショウ Oenothera rosea
 
マツヨイグサ属を識別するための特徴は以下の通りです。
1.四枚のかなり重なった花弁(黄色の花弁を持つ種が多い)
2.四裂して十字状になる雌しべの花柱
3.雄しべにはT字状に粘度の高い黄色の葯がつく
 
日本では白い花のものをヒルザキツキミソウ、ピンクの花のものをモモイロヒルザキツキミソウとして分類するのが好まれているようですが、英語/フランス語圏のサイトでは、両者を特に区別せず、同じ俗名で呼んでいるようです。つまり同じ花だが、白の花もあればピンクの花もあるというスタンスのようです。

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2011年5月8日日曜日

オオアマナ

[2011/05/06  千葉県北総花の丘公園]
白い星のような花がありました

[2011/05/06  千葉県北総花の丘公園]
花芯が実にユニークです

【分類 / 学名】

科: ヒヤシンス科 Hyacinthaceae  (ユリ科 Liliaceae)
属: オーニソガラム属 Ornithogalum

種: オオアマナ Ornithogalum umbellatum L.
英名: Star-of-Bethlehem / Grass Lily / Nap-at-Noon / Eleven-o'clock Lady
仏名: Ornithogale en ombelle / dame d'onze heures / Étoile de Bethléem
原産地: ヨーロッパ
*(注)ユリ科は古い分類体系とのことです


【観察】
花芯がユニークなので、画像検索で簡単にみつかりました。それは「ホソバオオアマナ」でした。しかし、詳しく調べてみると、非常によく似た「オオアマナ」と「ホソバオオアマナ」の二つがあることをしりました。皮肉なことに、この二つを比べると「ホソバオオアマナ」の葉は「オオアマナ」より太いのだそうです。「オオアマナ」の葉は「ニラのような」葉ということなので、最初の写真に写っている葉の形態が「ニラのような」印象を与えるので、これを決め手として「オオアマナ」と判定しました。

「ハナニラ」という植物の花も「オオアマナ」に似ているそうですが、写真で「ハナニラ」を画像検索してみると、花芯の構造や印象が全く異なっていました。さらに、「ハナニラ」の花は全体的に、忍者の三枚刃の手裏剣を二つ重ねたような印象を受けます。「オオアマナ」にはそのような印象はありません。

「ハナニラ」にはまだ出会ったことがありませんが、その時のために、ニックネームを考えておきました。オオアマナに似た「二つ重ねの忍者手裏剣」です。


【話題】

<ベツレヘムの星>
何といっても、英語の名前がすごいです。Star-of-Bethlehem 「ベツレヘムの星」ですから。フランス語の俗名でも、英語をそのまま仏訳して、Étoile de Bethléem になっています。

東方の三博士を生まれたばかりのイエスキリストへと導いた星が「ベツレヘムの星」ですが、そのいきさつを知り、キリスト教徒にとっての「ベツレヘムの星」の重要性を知るには聖書のマタイ伝福音書を読むのが一番かと思います。

1イエスはヘロデわうとき、ユダヤのベツレヘムにうまたまひしが、よ、ひがし博士はかせたちエルサレムにきたりて2『ユダヤびとわうとてうまたまへるものは、何處いづこいますか。われひがしにてそのほしたれば、はいせんためにきたれり』 ..........

よ、さきひがしにてほしさきだちゆきて、幼兒をさなごいますところのうへとゞまる。 10かれらほして、歡喜よろこびあふれつつ、 11いへりて、幼兒をさなごのそのはゝマリヤとともいますを平伏ひれふしてはいし、かつたからはこをあけて、黄金わうごん乳香にうかう沒藥もつやくなど禮物れいもつさゝげたり。

<11時の貴婦人>
もうひとつの英語、フランス語の俗名もしゃれています。「11時の貴婦人」です。その理由は、この時間帯にお目ざめになって、午後からは再び眠りについてしまうためだそうです。確認のため、午後遅く観察してみる必要がありそうです。いずれにしても、日本語の「オオアマナ」では、あまりにも素っ気ない命名で、負けてますね。

<ホソバオオアマナの葉は太い>
なんと、オオアマナの葉よりもホソバオオアマナの葉が太いとのこと。最初に命名した先人のずさんさを恨みたくなります。

<脱走した観賞用植物>
観賞用として導入され、それが脱走して野生化した帰化植物とのことです。

<オオアマナについての興味深い解説>
たまたま見つけた以下のサイトで、オオアマナについての興味深い解説を読むことができました。一読に値すると思います。
http://www.eonet.ne.jp/~ykita4020/pbible3.htm

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【英仏語の勉強】

上記のマタイ伝の日本語訳を参考に、英語、フランス語でも読んでみましょう。

1 Now after Jesus was born in Bethlehem of Judea in the days of Herod the king, behold, wise men from the East came to Jerusalem, 2 saying, “Where is He who has been born King of the Jews? For we have seen His star in the East and have come to worship Him.” .......

and behold, the star which they had seen in the East went before them, till it came and stood over where the young Child was. 10 When they saw the star, they rejoiced with exceedingly great joy. 11 And when they had come into the house, they saw the young Child with Mary His mother, and fell down and worshiped Him. And when they had opened their treasures, they presented gifts to Him: gold, frankincense, and myrrh.
参照サイト:http://www.biblegateway.com/passage/?search=Matthew+2&version=NKJV


Jésus étant né à Bethléem de Judée, aux jours du roi Hérode, voici que des mages d'Orient arrivèrent à Jérusalem,  2 disant: " Où est le roi des Juifs qui vient de naître? Car nous avons vu son étoile à l'orient et nous sommes venus l'adorer. " ......

 Et voilà que l'étoile qu'ils avaient vue à l'orient allait devant eux, jusqu'à ce que, venant au-dessus du lieu où était l'enfant, elle s'arrêta.  10 A la vue de l'étoile, ils eurent une très grande joie. 11 Ils entrèrent dans la maison, trouvèrent l'enfant avec Marie, sa mère, et, se prosternant, ils l'adorèrent; puis, ouvrant leurs trésors, ils lui offrirent des présents: de l'or, de l'encens et de la myrrhe. 
参照サイト:http://bible.catholique.org/evangile-selon-saint-matthieu/3182-chapitre-2

2011年5月6日金曜日

ウマノアシガタ

[2011/05/05  北総花の丘公園]
赤ずきんちゃんが出てきそうな雰囲気
この黄色い花が何の花か気になります
 
[2011/05/06  千葉県北総花の丘公園]
黄色い5枚の花びら
花の光沢が特徴

[2011 / 05/ 06  千葉県北総花の丘公園]
深い切れ込みがある根生葉は名前の由来になっている


【分類 / 学名】

科: キンポウゲ科 Ranunculaceae
属: キンポウゲ属 Ranunculus

種: ウマノアシガタ Ranunculus japonicus Thunb
英名: Japanese Buttercup
仏名: Renoncule du Japon ?
原産地: 日本、朝鮮半島、中国、台湾


【観察】

北総花の丘公園の陽だまりの広場でこの花が群生しています。なんだか赤ずきんちゃんが出てきそうな雰囲気です。インターネットの画像検索で探したのですが、あまりにも類似するものが多く特定できませんでした。「ケキツネノボタンに似ているような」と思ったのですが、一致するとは思えませんでした。

数日後、ふと思いついて、「ケキツネノボタン」に似ているなら同じキンポウゲ科、キンポウゲ属の可能性がある。この科や属の代表的な花を一つずつ画像で見ていけば出会えるかも」と思い、実行してみると、ウマノアシガタに行きつきました。

それでもまだ、完全に一致するかどうか確信が持てず、ウマノアシガタの識別ポイントを確認したうえで、再度観察に行き、そのポイントを確認して、やっとウマノアシガタと確信できた次第です。


【話題】

<キューティクルケアでキラキラ光沢>
確認ポイントのひとつが、この花の花びらがもつプラスチックのような光沢です。これはでんぷんの粒子が花びらの表面にクチクラ(cuticula)層、すなわち「キューティクル」を作るためだそうです。なんともオシャレな花ですね。

<名前の由来は「馬の足形」>
確認ポイントの二つ目が、名前の由来になっている葉の形でした。三枚目の写真に写っている葉にご注目ください。根生葉(こんじょうよう)と呼ばれるこの葉の形が馬の蹄(ひづめ)の形をしているから、「馬の足形」→「ウマノアシガタ」になったそうです。どう、ひいき目に見ても馬の蹄には見えませんが... それに、このオシャレなキラキラ花には似合わない、ひどく無粋な命名ですね。それで個人的には「キラキラキンポウゲ」「キンキラキンポウゲ」とニックネームをつけました。

<八重になればキンポウゲ>
キンポウゲとは八重のウマノアシガタのことだそうです。(実はキンポウゲはまだ知らない花です)

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【英仏語の勉強】

フランス語版Wikipedia の "Renoncule" に書かれている以下の文をチェックします。
参考URL:http://fr.wikipedia.org/wiki/Renoncule

Les renoncules sont un genre de plantes herbacées, annuelles ou vivaces, de la famille des Renonculacées, comportant environ 400 espèces. Elles ont un port très différent et sont le plus souvent des végétaux herbacés vivaces espèces. Aux latitudes tropicales ce sont plutôt des plantes d'altitude.

大雑把な訳
「キンポウゲ属とはキンポウゲ科の一年生または多年生の草本植物の一属で、400ほどの種がある。種の形態は変化に富み、多くは多年生の草本植物種である。熱帯地方では高地帯の植物であることが多い。」

キンポウゲ属(の植物)
英語:ranunculus
仏語:renoncules

草本植物
英語:herbaceous plant / herb
仏語:plantes herbacées

一年生植物
英語:annual plant(s) / annual(s)
仏語:plante(s) annuelle(s)

二年生植物
英語:biennial plant(s) / biennial(s) *スペルに注意 biannual(年2回の)ではない!
仏語:plante(s) bisannuelle(s)  *bisannuel(le) という単語はしっかり覚えたい


多年生植物
英語:perennial plant(s) / perennial(s)
仏語:plante(s) vivace(s)

(植物の)形態
英語:port
仏語:form and structure / morph(ology) / appearance

高山植物
英語:alpine plants
仏語:plantes alpines

亜高山植物
英語:subalpine plants
仏語:plantes alpestres / plantes subalpines

山地帯の植物
英語:montane plants
仏語:plantes montagnardes / plantes à l'étage montagnard

丘陵帯の植物
英語:foothill(s) plants / plants in the foothills
仏語:plantes à l'étage collinéen / plantes des collines

ツボミオオバコ

[2011/05/06  千葉県北総花の丘公園]
シロツメクサと同じくらいの背丈のオオバコの大群落

[2011/05/06  千葉県北総花の丘公園]
茎も葉も白い産毛に覆われています


【分類 / 学名】

科: オオバコ科 Plantaginaceae
属: オオバコ属 Plantago

種: ツボミオオバコ Plantago virginica
英名: Virginia plantain
仏名: Plantain de Virginie
原産地: 北米


【観察】
オオバコに関しては、ヘラオオバコを覚え、あと、在来種のオオバコを確認すれば十分と思っていたのですが、状況はそうではありませんでした。在来種のオオバコを探しまわったのですが、北総花の丘公園で見つかるオオバコは「ヘラオオバコ」とこの「ツボミオオバコ」ばかりでした。

公園内のドッグランのすぐ横にツボミオオバコの大群落があります。写真はそこの群落を撮ったものです。

ツボミオオバコの特徴は、茎と葉が産毛で覆われていること、大きな群落を作りやすいこと、葉の幅が狭く、へら状になっていることです。簡単な見分け方は全体を覆う白っぽい産毛を確認することだと思います。これも、上記の写真が参考になると思います。


【話題】

<帰化植物の新参者>
1913年に愛知県で最初に確認されたそうですが、日本全土いたるところで目につくようになったのは過去20年前後とのことです。つまり、一昔前までは、珍しいタイプのオオバコだったようです。

<識別は白い産毛>
特に茎がふわふわとした白い産毛に覆われているので、識別が容易です。というわけで、ツボミオオバコにつけた個人的なニックネームは、「産毛のオオバコ」です。参考までに、「ヘラオオバコ」には「襟巻オオバコ」とニックネームをつけました。

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イモカタバミ

[2011/05/06  千葉県北総花の丘公園]
花びらが5枚で、葉はカタバミ特有の3つのハート

[2011/05/06  千葉県北総花の丘公園]
中心は紫色で葯は黄色



【分類 / 学名】

科: カタバミ科 Oxialidaceae
属: カタバミ属 Oxalis
種: イモカタバミ Oxalis articulata
英名: Pink sorrel / Pink oxalis
仏名: Oxalis rose
原産地: 南アメリカ


【観察】

道端を見ながら歩いていると、カタバミ特有のハートの三出複葉が見られたので、黄色いカタバミが見られるはずと期待しました。ところが、なんと、紫色の花が咲いていました。でも、この花、よく見ると花びらが5枚で、カタバミによく似ています。

家に帰って、インターネットで「紫 カタバミ」と画像検索すると、一発で出てきました。「ムラサキカタバミ」の名前です。これで決まりと思ったのですが、甘すぎました。よく見るとムラサキカタバミは花の中心が明るい色で、葯が白色です。

今度は、「カタバミ属」をインターネットサイトで見つけて、何種類かのカタバミの写真をクリックしてみるとやっと「イモカタバミ」が見つかりました。この写真と同じで、中心部が濃い紫色で、葯は黄色です。こんどこそ同定できました。

カタバミを覚えただけでも、初心者植物愛好家としては十分満足だったのですが、覚えたばかりのカタバミの知識をベースに、知識をもう一段深めて、イモカタバミを見つけ、イモカタバミとムラサキカタバミの識別方法まで覚えることができました。少なくともカタバミに関しては、もはや初心者植物観察者ではなくなったかなと、実に良い気分です。


【話題】

<江戸時代からの帰化植物>
江戸時代末期に観賞用として導入されたものが帰化したとのことです。南アメリカ原産のイモカタバミは、北アメリカ、オーストラリア、熱帯アジアにも帰化しているとのことです。

<無性生殖>
種をつけないので、鱗茎で増殖するそうです。

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ドウダンツツジ

[2011/04/25  千葉県北総花の丘公園]
灌木に小さな白い花がたくさん咲いてます
もうトサミズキの花は終わっているはずだが...

[2011/04/25  千葉県北総花の丘公園]
近づいてみるとスズランの花に似ています

[2011/04/25  千葉県北総花の丘公園]
花をアップで撮りました


【分類 / 学名】

科: ツツジ科 Ericaceae
属: ドウダンツツジ属 Enkianthus
種: ドウダンツツジ Enkianthus perulatus
英名: White enkianthus 
仏名: Enkianthus
原産地: 日本 


【観察】

民家の生け垣や公園の植え込みなどによくつかわれています。遠くから花が咲いている生垣を全体的に見たとき「おや?トサミズキのような印象だな」と感じました。でも、このドウダンツツジが花をつける頃、もうトサミズキの花は終わっていますので、遠くからでも、それはあり得ないことだと分かります。一つ一つの花が見えるところまで近づけば、全く別物であることが明らかになります。さらに言えば、遠くからでも、トサミズキの花は黄緑色がかっているのに対してドウダンツツジの花は白ですから。

遠くから花をつけた植え込み全体を見ても美しく、近づいて花を見ると可愛いし、菱形をした葉の緑色もきれいです。更に秋になると美しく紅葉してくれるのですから、好んで植えられるのはもっともだと思います。


【話題】

<ツツジ科の花とは思えない>
ツツジの花のイメージからかけ離れています。調べるまでは、「ツツジと呼ばれれいても、分類上はツツジの仲間ではないだろう」と思っていたのですが、なんと正真正銘のツツジ科の植物でした。

<主要なツツジたちが咲き始めるころには終わっている>
5月がシーズンの主なツツジ群に比べて花期が早く、4月上旬には咲き始めていたと思います。そして、5月に入ると、他のツツジたちにバトンを渡し終わって、先駆けの役目を終えたかのように花期が終わります。

<盆栽の材料>
海外にも盆栽愛好家は大勢いますが、英文で検索しても仏文で検索しても、Bonsai との絡みでドウダンツツジを紹介しているサイトが多く見受けられます。

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